酒を愉しむ、美濃のぐい呑

一日の終わりに、ゆっくりと酒を味わうひととき。
そんな時間に寄り添うのが、作家の個性が息づくぐい呑です。

美濃焼には、柔らかな白と緋色が魅力の志野、灰色の景色が印象的な鼠志野、鮮やかな緑釉と自由な造形が特徴の織部、深い黒の瀬戸黒、穏やかな黄味を帯びた黄瀬戸など、多彩なやきものがあります。

同じ美濃焼でも、土や釉薬、造形、そして窯の中で生まれる景色は、作家によってさまざまです。

今回の企画では、志野・鼠志野・織部・瀬戸黒・黄瀬戸の5つのやきものから、13点のぐい呑を選びました。

日々の晩酌に使う一客として。
あるいは、手に取って眺め、作家の表現を味わう一客として。

それぞれの個性を見比べながら、お気に入りのぐい呑を見つけていただければ幸いです。

志野 — 柔らかな白と、炎が生む景色

志野は、美濃焼を代表するやきものの一つです。長石を主原料とする釉薬によって生まれる、柔らかな白と温かみのある質感が大きな特徴です。

焼成によって現れる緋色の景色や、釉薬に生じる細かな表情、厚みのある造形も志野ならではの魅力。一つひとつ異なる表情に、土と炎が生み出す豊かな景色を感じることができます。

小さなぐい呑の中にも、白の濃淡や土味、焼成による変化が凝縮されています。

谷口 治

鼠志野 — 灰色の景色に宿る、力強い表情

鼠志野は、鼠色を基調とした落ち着いた色調と、白や鉄褐色が織りなす景色が魅力の美濃焼です。

灰色や黒褐色の部分に、白く現れる文様や焼成による色の変化が重なり、独特の奥行きを生み出します。釉薬の表情や素地の凹凸によって、同じ鼠志野でも印象は大きく異なります。

静かな色合いの中に力強さを感じさせる、味わい深いぐい呑です。

谷口 治

織部 — 緑釉と自由な造形

鮮やかな緑釉や鉄絵による文様、そして大胆で自由な造形。織部は、桃山時代の斬新な美意識を今に伝える美濃焼の一つです。

緑を基調としながら、黒や褐色などが重なり合う釉薬の表情も魅力です。造形や焼成によって印象が変わり、作家それぞれの個性が際立ちます。

伝統を受け継ぎながらも、自由な発想が感じられる織部のぐい呑をお楽しみください。

瀬戸黒 — 深い黒が引き締める美しさ

瀬戸黒は、深く艶やかな黒釉が特徴の美濃焼です。桃山時代には、茶の湯の器として独自の存在感を確立しました。

黒一色に見える器も、光の当たり方によって釉肌の起伏や艶の違いが浮かび上がります。華やかな色彩とは異なる、静かで引き締まった美しさを味わえるぐい呑です。

谷口 治

黄瀬戸 — 穏やかな黄味と、土の味わい

黄瀬戸は、黄味を帯びた釉調と、落ち着いた土の表情が魅力の美濃焼です。

その特徴的な景色の一つが、膽礬(たんばん)による緑色の斑紋です。黄色を基調とした釉肌に、鮮やかな緑がアクセントを添え、黄瀬戸ならではの味わい深い表情を生み出します。釉薬の濃淡や焼成による色の変化も、器に豊かな奥行きを与えます。

華やかさを主張するのではなく、穏やかな佇まいの中に趣を感じさせる黄瀬戸。日々の晩酌に寄り添う一客として、その柔らかな魅力をお楽しみください。

小川 哲央

店主の一言

ぐい呑は小さな器ですが、作家の個性がよく表れる器だと思います。

志野や鼠志野の柔らかな色合い、織部の鮮やかな緑、瀬戸黒の深い黒、黄瀬戸の穏やかな色調。同じ美濃焼でも、それぞれに異なる魅力があります。

今回は、日々の酒の時間を豊かにしてくれるような作品を選びました。酒を味わうために使うのはもちろん、器そのものを眺め、手に取って楽しむのも、ぐい呑の魅力の一つです。

ぜひ、13点の作品を見比べながら、ご自身の感性に響く一客を見つけてください。

ギャラリーはせがわ
店主 長谷川 博司